航空電子技報を発行するに当り、一言ご挨拶を申し上げます。 リーマンショック後の急激な景気の落ち込みもいくらか落ち着きを見せ、まだら模様ではありますが多少の回復の兆しを見せてきております。しかし、日本経済や産業界に残された課題は山積しており、解決の道筋は未だ明確になっておりません。ジャパンシンドロームという負のスパイラルを打破していく為にも、グローバルな視点での新たな価値の創出を目指した、正にイノベーションに向けて新しい世界を思い描く創造性や夢が、此れまで以上に必要なのではないでしょうか。この事は直近の製品開発であっても、基礎的な開発であっても、新たな価値として何を実現したいのかを明確に持って開発に当るという点では全く同じなのではないでしょうか。イノベーションは結果であり、スタートは開発コンセプトの正しさ、斬新さであり、新たな価値として何を実現したいのかという開発者の思いや夢が基盤になっているのではないかと思います。此れまで継続してきた航空電子技報も、様々な開発に携わった技術者が、創造性や夢をより明確に意識するきっかけとなり、読者の皆様に少しでも技術者の思いをお伝えすることが出来れば、その役割を果たすことが出来ているものと考えております。 今回の技報では、基礎技術領域として商品開発センターから、「超分子型金ナノ粒子集合体の電位による配列制御」と題して、従来から取り組んでおります機能性材料に対する取り組みの一端を紹介すると共に、コネクタにおける異種金属接点の接触抵抗と摺動という、コネクタの基本的現象に対する取り組みの成果を紹介しております。このような取り組みは、必ずしも直近の製品の開発には結び付きませんが、新たな価値の創出であったり、現象の正確な把握にもとづく品質の向上等に寄与できるものと考えております。一方で具体的製品に展開されている技術として、近年の携帯機器に多用されておりますカード用コネクタの勘合構造の開発を紹介すると共に、普段あまり馴染みの無い、航機事業における加速度計の製品と技術紹介、慣性装置におけるGPSハイブリット技術等について判りやすく紹介しております。 評価技術としては2009年から稼働いたしました電波暗室における評価内容などについて紹介し、今後ますます求められる高速伝送技術に対する取り組みの一端を紹介しております。製品紹介としては携帯機器などへの展開が期待されている静電タッチパネルや、産業機器向けの光学式タッチパネル、コネクタ製品では狭ピッチ、高速伝送、カード用ソケット等を中心とした最近の新製品の紹介をさせていただいております。 最後になりましたが、今回の技報をご高覧頂き、ご意見、ご指導を賜りますと同時に、当社が取り組んでおります技術開発に対しご支援を賜りますようお願い申し上げます。